野鳥撮影関して色々注意すべき点がある事は、愛好者たちの間でも良く知られている事だ。しかし、一般的ルール・マナーというレベル以上のモノは存在しないし、また誰にも作れないのが現状だろう。
これは、日本国内で観られる野鳥の種類500種以上全ての生息場所・その生態(繁殖期・非繁殖期・成鳥・幼鳥)や種による警戒心が異なる事を考えれば、一つの統一ルール・マナーでなど、とてもカバーしきれない事くらい、少しでも野鳥の事を学べさえすれば誰にでも判る事だ。
一方で野鳥関連団体に入っているからと言って、団体に属さない一般のバーダー、愛鳥家達に何か指示をしたり規制したりできないのも当然の事だろう。野鳥団体のメンバーに入るという事は、決して何か特権を得たという事ではないのだ。
ベンツやベントレーなどの高級車に乗っているからと言って、その車同等の人格を得られる訳ではないという事と一緒だ。むしろ逆の方が多かったりするのもご存知の通りだ。
筆者が活動しているエリアでは、バーダーと野鳥に関する色々な話、情報が入って来るが、知っている限りでは野鳥の生態や生息状況に支障が出る様な話は聞いた事が無い。
先日のブログで発表した、人吉市の球磨川における2014年・2015年国体カヌー大会の開催などで、カヌーイスト達の練習の際、ヤマセミ繁殖に一部障害が在った程度だろうか。
2年ほど前、大阪エリアの淀川にハイイロチュウヒやコミミズクが飛来した事が有ったが、淀川土手に最盛期1000名以上の見物人・観察者が集まっても何処かへ飛去してしまうようなことは無かった。勿論その際はお目当ての珍しい野鳥までの距離が100m以上は離れていたからだろう。学校の理科の野外授業の一環で団体で先生引率の元、大挙押し掛けた生徒さんもいたと聞くが、問題は無かった様だ。
野鳥の側で、人間との距離は推し量って生息・生活しているのだから、安倍政権ではないがあまり忖度(そんたく)して遠慮する事もないだろうと思う。バーダー、観察者、撮影者の側でその距離や装備・準備を考えれば問題は無いと思われる。
逆に野鳥を気遣うあまり、周りが人間の生活の場であるのに、気取って米軍の狙撃兵が着る様な迷彩のモコモコスナイパーウエア(NCISのギブスが使用するようなアレ)等を着ていたりすれば、一発で住民に怪しまれ通報されたり職務質問されるだろう。
地元の方が朝夕ウォーキングされている人吉市内の球磨川土手で一人用の迷彩テントを張っても同じ事。野鳥への忖度もほどほどが肝心だ。
人吉市のヤマセミの場合、球磨川土手からの撮影であれば何処からでも可能だ。基本的に早朝日の出から午前9時までの間が最適時間だろう。
熱心に撮影される女性カメラマン、車は地元の方に邪魔にならないようきちんと配慮されている。
川幅150~200mの球磨川本流では対岸のヤマセミ観察・撮影に関しては何の問題もない。
三脚を立てずとも堤防の手すりなど撮影に便利な設備を活用すると良い。
こうした船着き場やハネの様な地形を活用する際は、一度だけではなく数日・数回通う事が重要だ。いきなり行ってこういう場所に陣取っても野鳥は警戒する。同じ服装、同じ時間に三日通えば野鳥の方もいつもの生態を見せてくれよう。いきなり行ってこういう目立つところに陣取れば、野鳥はこの場所を避けるので他の場所のバーダーさんを喜ばせるだけだ。野鳥は決して自分のテリトリーの細かい変化を見逃さない。
車はもちろん地元の方々の邪魔にならないような停め方をしなければならない。この場合は堤防側手すりからの距離は13cm。
対岸からかって在った架線上のヤマセミを狙う撮影者。ヤマセミまでの距離は80m以上あるので、野鳥側は全然気にせず警戒もしていない。
暑い時期の野鳥観察は日陰にクルマを停め、撮影者自身の健康管理が重要だ。ベテランになると撮影ポイントのベストポジションをご存じだ。
迷彩の半透明ネットは結構役立つが、後ろが明るいと意味を成さない。
長時間にわたる観察や撮影の場合は、土地の所有者、施設責任者に必ず了解を得て車を停めさせていただき、何をしているのかを説明すべきだろう。ほんのひと時だからと黙って行うのが一番良くない。一人の行動が野鳥観察者・撮影者全体に対する評価・評判に影響がある事を各自自覚すべきだろう。
一つ一つの例に詳しい説明は付けないが、少なくとも目的としている野鳥がそこから飛去してしまわない限り、迷惑はかけていないと判断して良いと思っている。6~70mの距離でレンズを向けている人間が居たからと言って、繁殖を止めたり、何処かへ退避するような軟な野鳥達では無い。
刺し網漁の鮎漁師さん、6月の解禁からどっと押し寄せる太公望に危機感を持つなら、とうの昔に人吉のヤマセミ達は居なくなっているはずだろう。ほんの一部のカヌーイストの様にヤマセミを蹴散らして漕いだりしない限り影響は無いとみて良いだろう。
勿論、フクロウやその他の野鳥が営巣する洞穴に脚立を掛けてよじ登り、ストロボを発光させて抱卵中や育雛中の野鳥を撮影したりするのはとんでもないことだ。意外に野鳥団体所属メンバーにこの手が多く居るとも聞く。
余程の学術的研究を複数のメンバーで野鳥の生息に気を付けながら行ったり、定点観測としてデータを残す場合以外、一般的な愛鳥家として、あるいは単に野鳥撮影興味でそういう接近撮影を行うのは、仲間同士で諫める必要があろう。
ましてや、趣味本位でその類を数多く掲載した写真集を出版した者を褒め、仲間・同僚に勧めたりする愛鳥団体の幹部メンバーも過去においていた様だが、最も慎むべき事だろう。
メディアの方々にもその辺り、実状を良く研究して頂けると嬉しいのだが。